ガチャ。








「手塚―。ねぇ、パーティーっていつ?」



「・・・・・・・・・・・・・・・。」

















☆ ハッピーメリーバースデー ☆

















「聞いてる?手塚」

「部室に入って来るなり・・・いきなり何だ」

「パーティーはいつやるの?って聞いたのよ」

「いつも何も・・・。そんな行事は予定していない」

「あら。じゃあ今から予定立てましょ?」








手塚の眉間にシワが増えた。








「そんな事する必要はない」

「でも年に1回の行事よ?やりたいじゃない。パーティー」

「だいたいクリスマスは明日だろ。今から計画して間に合うはずが・・・」

「て・づ・か・くん」








は「違う。違う」っと人差し指を口に持っていくと
今度はその指を手塚の口元へ近付け、そっと耳打ちをした。








「・・・・・わかった」

「ありがとう。手塚」

「明日は男子テニス部の部室を使ってかまわない。
 それから・・・準備に人手が必要だったらレギュラーにも協力するように声をかけておく」

「必要経費の方は私に任せて?すべての段取りは私が組むわ」

「残る問題は・・・」

「そうね。とにかく時間が無い・・・。タイムミリットは明日、ターゲットが来るまで」


















部活中、桃城と海堂が頭にボールをぶつけた、ぶつけてないの喧嘩をしていると
2人の顔の間ギリギリを黄色いボールが高速で飛んできた。



油が切れたロボットのようにガチッガチッガチッ・・・と2人同時にボールが飛んできた
方向に顔を向けると、笑顔でラケットを構える がスラッとそこに立っていた。










「顔に当てられたくなかったら・・・協力しなさい?」


















一方手塚は、ベンチで汗を拭く不二と乾に後ろから近付いた。








「不二。乾」

「ん。なに?手塚」










手塚は2人にそっと耳打ちすると、不二の目がスッと開かれた。
乾も同時に眼鏡を押し上げ、ノートを開く。








「クスッ。そういうことなら、協力するよ」

が司令塔ならなんとか間に合うだろう・・・」


















「菊丸ビィーム!!」

「あぁ!!」






ビシィー!!






「残念無念、まった来週♪」








お決まりの台詞に機嫌を良くしている所に大石が菊丸と、菊丸と試合をした河村にタオルを持ってきた。
3人がコートで話していると乾がそこへノートを片手に入ってきた。








「にゃ。乾―!次の大石との試合・・・にゃ?」








乾は無言でノートのあるページを開くと、3人はそこに書かれている文字に目を走らせた。








「わかったよ。乾」

「楽しみだね。俺は不二達を手伝うよ」

「まっかして!!俺、そういうの得意―♪」

「あくまでも影で作業を進めるように。バレないように慎重に頼むよ」





































クリスマス。



町は皆、色とりどりの電飾に心弾ませながらクリスマスソングなんてものに耳を澄ませ。

子供達はサンタクロースはいつやって来るのだろう?っとソワソワ落ち着かないこの日。

学校はもちろん冬休みに入ったがテニス部の練習はある。

は、重い雲を見つめると満足そうに頷いた。











「どうした?

「ねぇ、手塚。この空を見てよ」

「・・・空がどうかしたか」

「今日はいいパーティーになりそうね」








はご機嫌にクリスマスソングを鼻歌しながら部室に入る。

手塚はもう1度空を見上げると、その後を追った。













ガチャ。








「さぁ、みんなー!準備はOK?」

「もちろん。ギリギリだったがな」

「あとは主役待ちだね」

「それにしてもあいつ遅っせーなぁ。遅っせーよ」


















「ハァー・・・」








吐く息が白い。別に面白くも無いけど。
こんなに寒くちゃ手がかじかんでラケットを上手く振れない。
そういえばさっき桃先輩から「早く来い」ってメールが入った。

部活の時間には十分間に合うのに。自主練の相手かな。








マフラーを巻き直しながらリョーマはそんなことを頭の隅で考えていた。
しかし、いざテニスコートへ向かうとその無人さに驚いた。



まだ誰も来て無いじゃん!メールをくれた桃先輩までもが。
もしかして部室の鍵も開いてなかったりして・・・。










ガチャ。



「あ、開いてんじゃん・・・」








扉を手前に引いて部室の中に足を1歩踏み入れたと同時に甲高い爆発音がいくつも響き渡った。











パンッ!パンッ!!

パパンッ!!!





「っ!!?」


















「「「お誕生日おめでとう越前(リョーマ)!!!」」」


















少し遅れてからハラハラと黄色やピンクの紙吹雪が俺の頭に降り注いだ。



それと同時に思考が一時的に停止する。



ゆっくり我に返ってみるとテニス部のメンバーと 先輩が
使用済みのクラッカーを構えて俺を見つめて笑っていた。








「えっ・・・?」

「ほらほら。座って座って!!」








中心に座らせられると、目の前にはお菓子やジュース。寿司。

そしてケーキがあった・・・。








「みんなで計画して準備したのよ。リョーマに内緒でね」








先輩はそういうと悪戯っぽく片目を閉じて見せた。


















部室の中はすでに主役であるリョーマに限らず、全員がこの日を楽しんでいた。


リョーマはその騒がしい中、マフラーを手に取るとそっと部室を抜け出した。













先輩?」

「リョーマ!どうしたの?」

先輩こそ・・・風邪ひくよ?」








リョーマは持ち出してきたマフラーを の首に巻いた。








「ありがとう。リョーマ」

「別に・・・ 先輩に風邪ひかれても困るし。こんなに寒い中何やってんの?」

「もうすぐだと思うんだけど・・・」

「だから何が?」





「あ!ほらっ、リョーマ見て!!」











先輩が空を指差して叫ぶから、何かと思って見上げてみれば・・・










フワッ。










「冷たっ・・・」

「ね?雪だよ」










それは、重い空からは想像できないほど軽く・・・白く。

フワフワと俺と 先輩の上に舞い降りてきた。

ホワイトクリスマスか・・・。













「ホワイトバースデーだね。リョーマ?」










少し見上げると、 先輩が雪に負けないくらいやわらかく・・・温かく微笑んだ。













「ハッピーバースデー。リョーマ」

「メリークリスマス。 先輩」















Deep Space 音沙制作。(2007.12.1〜12.25)