君が居る ただそれだけで
今は見てるだけ
「はぁ…」
まだ練習試合中だというのに思わず大きなため息をついてしまった。
やっと会えた。
だけど、だからと言って話かける勇気がない。
おまけにフェンスをぐるっと囲む熱狂的なファンの子達を見た途端 ああ、やっぱり周ちゃんはモテるんだなと感じた。
これだけ人気があるならきっと可愛い彼女が居るんだろう。
「う゛ー…」
やっと
やっと会えたのに
こんなに近くに居るのに何も出来ない
そう思うと自分が情けなくてぼろぼろと涙がこぼれた
「、ドリンク……って自分どないしたん!?」
「なんでもない…」
ちょうど試合を終えてドリンクをもらいに来た忍足が驚いた様子で話しかけてきた。
なんてタイミングが悪いんだ…
「じゃあなんで泣いてるん?」
「…忍足には、関係ない」
その言葉を放った瞬間忍足の顔が悲しげに歪む。
しまった 言い過ぎた とハッとして慌てて謝ろうとした瞬間、急に強い力で腕を引き寄せられバランスを崩した。
加速した鼓動の音と人のぬくもり。
忍足に 抱きしめられている
「なっ…!!おした、り!?」
「その台詞は傷つくで…。」
「う…ご、ごめん」
そう小さく呟くと まぁええよ と言いながら頭をくしゃくしゃと撫でてきた。
「俺に出来る事があるなら力になりたいんや。」
「忍足…ありがとううぅ゛ー…」
「よしよし。は涙もろいなぁ」
「…泣かせること言う忍足が悪い」
「好きな子が泣いてるの見たら普通ほっとけへんやろ」
「うん……え?いや、あの、なんの冗談…」
さらりと言われた言葉に思わず耳を疑う
続きを言おうと顔を上げた途端、目に飛び込んできたのは真剣な顔をした忍足だった。
「冗談やない。好きや、。俺と付き合うて。」
「…」
どんどんすれ違っていく心。
向かう先は どこだろうか。