やきもちやきな
‐宍戸亮の場合-












「…それだけでいいの?」


「ばっちりや。ほな今からは俺から離れんといてな。」



にっこりと胡散臭い笑みを浮かべる忍足を見上げて、ああ…相談した相手を間違えただろうかとうなだれた。






数時間前の事ー…





「ねぇ。」


「なんだよ。」


「私の事好き?」


「…は!?」




私の問いかけに対してバッと顔を赤らめたコイツは一応私の彼氏、宍戸亮。
純粋ていうかなんていうか…まぁ亮らしいっちゃ亮らしいんだけどさ。


「なんだよ急に…」

「いやーたまには愛を囁いてほしいなと思って。」


そんな事をさらりと言うと「あのなぁ…」と呆れたようにため息をつかれた。
だってたまには聞きたいじゃない!
亮の性格上素直に好きだなんて言ってくれないって分かってたけど…告白された時以来聞いてないんだよね。

まぁ仕方ないか、なんて引き下がろうとした時


「…馬鹿じゃねーの。」


ぽそりと呟いたその一言を聞いた瞬間私の中で何かがプツンと切れた。



「っ…馬鹿は亮の方でしょ!!亮なんてもう知らない!!大嫌い!!」


「あ、おい!!!」



追ってくる亮の手を振り払って走り出した。
亮と初めて喧嘩したー…

大嫌いなんて言っちゃった。








ドンッ









「あ、すいません!」


「あれ、やんか。どないしたん?」



聞き覚えのある低音ボイスの関西弁。
この声は…!
顔を上げると予想通り忍足だった。



「お、忍足〜…!!!!」


「よしよし、話聞いたるから泣かんといてぇな。」


忍足とはクラスメイトでよく喋る。
悩みを相談することもよくあって、そんな時は決まって私の頭をぽんぽんと撫でて真剣に話を聞いてくれる。
私にとって心強い存在だ。

早速さっきの出来事を一通り話すとしばらく何か考えるような仕草をする忍足。
その後出てきた台詞は「ほな、は俺にべったりくっついとってや。」だった。
いつものセクハラ混じりの冗談かと思ったらどうやら本気らしい。何考えてるんだか…。


そんなこんなで冒頭に戻る。








「あのさ、そんなんで本当に仲直りできるの?」


「まぁ後々分かるやろ。ええから俺に任せとき。」


いやいや…分かる気がしないよ。
まぁいろいろ考えた結果なんだから忍足なりに作戦があるんだろうと思って結局忍足から離れられない事になった。






…が







「…忍足。」


「ん?なんや。」


「暑苦しいんですが…。」


今の状況を説明するとぴったりと私にくっつく忍足。
耳元で聞こえる吐息混じりの無駄にエロい声。
腰には手が回されていて落ち着かない。



「酷いなぁ姫さんは…。傷つくやん。」


「だってこれはやりすぎでしょ!!亮に見られたら誤解されるじゃん!!」


「まぁまぁ、スキンシップやと思えば自然やろ。」


「そんな過激なスキンシップがあるかアホ!!」


「フッ…さすが、ナイスツッコミや。…あ、噂をすれば、やな。」


まさか、と思ってバッと忍足の視線の先を追うと唖然とした表情の亮の姿が目に映った。


まずい。完璧に誤解された…!!



「おっ…忍足!!離れて!!」


「ああ、アカンて。落ち着きや。ここで動いたら台無しやで?」



仲直り…したいんやろ?

そう耳元で囁かれた言葉を聞いてグッとこらえて、亮の視線を気にしながらも通り過ぎた。
その後も何かと亮と合ったものの、罪悪感でチクチクと胸が痛んで見てられなくて俯いたままだった。





































「あああもう生きていけない…!!!!どうしてくれんのよ忍足!!」


は心配性やなぁ。そんな心配せんでも大丈夫やって。」


「心配せずにいられるかーっ!!絶対誤解された…。」


「上手くいくって保証したる。」


「上手くいかなかったらどうすんのよ…。」


「せやなぁ…その時は」


お互いの息がかかるくらいの至近距離で「俺が責任とったるわ」と囁かれた。
は…?何言ってんの!?と言おうとしたけど、更にゆっくりと近づく端正な顔立ちに思考が止まった。

唇まであと数センチ。


亮…!!




「…何してんだ忍足ッ!!」



待ち望んでいた、聞き覚えのある声に安心してうっすらと涙が浮かぶ。

来て、くれた。



「なんや、来てもうたか…。」


「てめぇ…していい事と悪い事があんだろ!!!」


忍足の襟を掴んで罵る亮。
見たこともない程酷く怒った表情に驚いた。
こんな時に不謹慎だけど、ああ…大事に想われてたんだなぁ。という思いがじんわり胸に染みた。



「宍戸」


「…んだよ!!」


「大事な姫さんならもっと可愛がらなアカンで。言葉で伝える事も大切や。」


「…は?」



手間のかかる奴やなぁ。ま、宍戸らしいわ。と苦笑して立ち去る忍足を亮はぽかんとしたまま見送った。



「あのよ…」


「は、はいっ!?」


「俺ははめられてたって事か?」


「え…っと。忍足に相談したら俺にくっついとってーって言われて……あ。」


そうか、こうなる事を分かってて忍足はああいう行動に出た訳ね…。


「…っ!!!俺1人馬鹿みてぇじゃねぇか!!」



みるみる赤くなる亮。
ああ、なんか…可愛いなぁ。
私やっぱり亮が好きだ。



「亮、ごめんね。」

「…お前が謝る事じゃねぇよ。」

「でも…」



我が儘言いすぎたよね。と言いたかったけど、その言葉は亮の唇によって遮られた。



「好きだ。」


「…!!」


「前からだけどよ、忍足といるを見てるとすげぇ苛立って…気になってしょうがねぇんだ。」



男の嫉妬なんてみっともねぇよな、と苦笑する亮。
抱きしめられるに比例してぎゅっと胸が締め付けられ、顔は熱を帯びて鼓動が速くなる。


「不意打ちすぎだよ亮…でも私も好きだよ。大好き。」


「…お、俺も。大好きだぜ?」



ふふ、顔は見えなくたってどんな表情してるかバレバレだよ、亮。
2人して真っ赤な顔して気持ちを確かめ合う不器用な私達はきっと似た者同士。









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初書き宍戸です。
宍戸より忍足の出番が多いような気が・・気のせい気のせい!!
宍戸はツンデレ。だけどいざとなったら男前。
そんな宍戸に激萌えだぜ!(失せろ