困った。





何を悩んでいるかというと2月29日…四年に一度しか訪れない、特別な日。我が幼なじみ不二周助の誕生日である。
いつもは3月1日に祝ってたけど今回は当日に祝うことができる。
張り切って早々と買ったプレゼントは彼に似合いそうなアンティークのティーカップセット。
長い付き合いだから周助が好みそうなプレゼントを選ぶのは楽だったけど…

あとの問題はどう祝うか。



「うーん…やっぱり驚かせたいよね。」


せっかくだから印象に残る誕生日にしてあげたい。あ、勿論いい意味でね?
悩みに悩んだ末由美子さんに相談すると、「じゃあうちのパーティーのゲストとして来たらどうかしら?」
なんて言われたのでお言葉に甘えて不二家のパーティーにお邪魔することになった。
勿論周助には全部秘密!

ふふ、楽しみだなぁ…。






――誕生日当日







家を出ると少し先に見慣れた後ろ姿を見つけた。
笑顔を浮かべると一目散に駆け出してその背中に思いっきり抱きつく。



「周助!誕生日おめでと!!」


「フフ、やっぱりか。ありがとう。」


「やっと当日に祝えるんだねー。めでたいめでたい!」


なんか楽しそうだね」


「…え、そう?気のせい気のせい!!」




危ない危ない。
バレちゃったら面白くないもんね。

その日の授業はやけに長く感じた。
わくわくして先生の言葉も耳に入らなくて、周助喜んでくれるかなぁ、なんて考えるたびに頬が緩んだ。
由美子さんとケーキを作る約束をしていたので放課後になると急いで帰る。



「お邪魔します!」


「いらっしゃいちゃん!さっそく作りましょうか。」


「はい!」



手順に沿って慎重に作った生地を型に流してオーブンに入れると、焼き上がるにつれてふわりとした甘い香りが部屋中を包む。
焼いてる間に生クリームをホイップして果物を切って後片付けをして…
上手く焼けたスポンジを二つにスライスして程よい甘さの生クリームを塗って酸味のある色鮮やかな果物をデコレーションをする。


「よし、完成っ!!」


由美子さんがついていてくれたお陰で見た目も味も美味しそうだ。
思ったよりスムーズにできたから夕飯作りを手伝ったり帰ってきた裕太をいじって遊んだりしたものの…










「遅い…」




「確かに。兄貴の帰りが遅いなんて珍しいな。」



もう7時を回ったけど帰ってこない。
部活はもう終わってるはずなんだけど遅いなぁ…。
その時タイミングよく鳴った電話を由美子さんがとった。


「あ、周助?ええ…分かったわ。帰り気をつけてね。」


周助と聞いて反応したのもつかの間、どうやら用件を述べるだけだったらしく電話はすぐ切れた。


「部活のお友達が誕生日パーティーをやってくれてるらしくて…帰りがちょっと遅くなるみたい」


「あー…そっか!なるほど。」


すっかり忘れてた。

そういえば英二がかわむら寿司でお祝いだって教えてくれたなぁ。
あのメンバーならさぞかし盛大に祝ってる事だろう。


「仕方ない…か」


わさび寿司や乾汁なんて味覚を疑うようなもの食べてお腹いっぱいになって帰ってくるんじゃなかろうかあいつは。
せっかく頑張ってケーキ作ったのにな…。


「ま、気長に待とうぜ。」

「ん。」

テレビを見て気を紛らわせようとしたけど内容が頭に入ってこなくてつまらない。
周助…今頃楽しんでるのかなぁ…早く帰ってきてよ。
あくびをして机に突っ伏す。時計の針は既に9時を指していた。









.








.



.






あたたかい。
ふわりとした心地よい空間の中で徐々に息苦しさを感じた。

え、ちょっと待って本気で苦し…!!!



「ん…」


…起きた?」


聞き慣れた声がしてハッと目を覚ました。
一気に現実に引き戻されてサーッと血の気が引く。


「え、待って、私寝てたの!?い…いい今何時!!?」


慌てて時計を見ると11時。
後1時間で日付が変わる。



ああ…最悪だ…



じわりと涙がこみ上げてきた。
周助の大事な日だから、今日は1番傍に居たかったのに…。


…泣かないで」


「…るさい」


八つ当たりだって分かってるけどそんな言葉しか出なかった。
祝ってあげなきゃいけないのに何してるんだ自分…。

周助は一瞬困ったように笑うと一気に距離を縮めてきて柔らかく私を抱きしめた。
周助の体温と鼓動の音が心地いい。


、遅れてごめん…抜けるに抜け出せなくて…」


「うん…」


「ケーキありがとう。凄く美味しかったよ。」


「うん……っていつの間に食べたの!?」


が寝てる間に、ね。」


「う…ごめん。」



周助は何でが謝るの、とクスクスと笑うと私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
そんな綺麗な顔で、しかも至近距離でそんな事をされては免疫のある私でも流石に赤面する。
妙に恥ずかしくて周助の腕の中から抜けようとしたがガッチリと腕を回されていて身動きができない。
くそう…確信犯め…!!
抵抗しても無駄だと観念するとそのまま周助の胸に頬をうずめて話を続ける。




「ねぇ周助」


「ん?なんだい?」


「ほんとはね、凄く印象に残るような誕生日にしてあげたかったんだ。」


「クス…しっかり印象に残ったよ。」


「…あのね?変な印象じゃなくてこう、後で振り返った時に幸せな誕生日だったなって思えるような、さ。」


が僕の為にケーキ焼いてくれたり帰りを待っててくれただけでも充分すぎるくらい幸せだったけど…じゃあプレゼント、貰おうかな。」


「あ、そうだ!プレゼントはね、周助が好きそうなアンティークの…んっ!」


台詞は周助の唇によって遮られた。


「好きだよ、。『ずっと僕の傍にいる』って約束してくれる?」


「ええ…と…は、はい!」






2/29また4年後もその先もずっと君が隣にいることを信じて。







4年に1度の2人の記念日。

(なにがあってもこの手は離さないよ?)(こ、こっちこそ!)







--------------------------------------------------

誕生日おめでとう不二!!
大好きだ不二!!
しかし本当にギリッギリで書いた為かなり不完全燃焼。こりゃ酷い。
ちなみに寝てる間なぜ息苦しかったかというと不二がキスしてたから、という設定。笑
なぜか書いてるこっちが恥ずかしい・・。